鏡に映る、自分。

真っ白のプリーツシャツに、真っ白のパンツ。

着たことあるそれは。

撮影の時とは、まるで違う。

大きく、息を吐く。

 

多少の緊張と。

引き締まる、思い。

 

護るべきものは、何ひとつ変わらない。

けど。

ちゃんと。

正式に。

 

 

 

だから今日からの俺は。

今までの俺とは違う。

 

 

 

 

 

ドアが開き。

父さんと母さんが入ってくる。

 

「あら? あなたうまく結べるの? お父さんにお願いしたら? たぶん上手よ」

「……大丈夫、習ったから」

 

大きな鏡台の前。

俺はアスコットタイを締めてるところ。

 

「まさに、今日ね」

「え?」

「“Tie the knot”よ」

「……ああ」

 

結び目を作る

そういうことか。

 

「夏野ちゃん、すごく綺麗だったわよ」

「……見に行ってきたの?」

「夏野ちゃんのお父さんとお母さんに挨拶がてらね。 前にドイツで会った時より綺麗になったんじゃないの?」

「……化粧してるからだろ?」

「違うわよ。 外見じゃなくて、内から出るものの話」

 

そう、なのか?

途端。

勢いよく、ノック。

 

「失礼しまー……ああ、おじさん! おばさん!」

「ああ、洋子」

「お久しぶりです! 元気でした!? 珪も……あら、珪……今日はさすがに素敵じゃない。 髪、切ったの?」

「……ああ」

「だいぶ短くなったんじゃないの? 見たことないから新鮮ねー」

 

ベストを着て。

ボタンをかける。

確かに。

ここまで短くしたのは何年振りだろう。

さすがにもう22だし。

あの髪型じゃ、と。

丁度いい機会だと。

 

「夏野ちゃん……本当に綺麗だったわ……私のお嫁さんにしたいくらい」

「何言って……ていうか、洋子姉さんも見てきたのか?」

「当たり前じゃない。 可愛すぎてツーショットで写真も撮っちゃったもの」

「あらいいわね! お父さん、私たちも撮ってきましょ」

 

妙に心が躍ってる、母さん。

 

「それにしても……本当に良かったわ。 夏野ちゃんに感謝ね」

「……どうして?」

「だって、珪のところにお嫁に来てくれるのよ? ちょっと心配だったのよ、あなたなかなか心を開かない人だから」

 

そう、だな。

俺ももっと若い頃は。

人生設計には組み込んでなかった。

結婚、なんて。

 

夏野という人間に逢えて。

俺の身も心も。

環境もがらりと変わって。

あと少しで大学卒業というこの日に。

 

あいつとの。

誓いの式。

 

そうだな。

まだ、あいつに言ってない。

 

時計を見れば。

式まであと45分。

 

俺は。

部屋のドアを開けて。

 

 

 

夏野の控室へと、向かった。

 

 

 

 

 

「tie the knot ―groom side」
20170402



これね……だいぶの言い訳あります〜……。
てか夜中の酔っ払いが創作書いてちゃダメだ(爆笑)










to bride side



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