「ほら、違う。 そこはこうだって言ったろ?」
「あ、そっか」
今日は“珊瑚礁”の定休日。
でも店のテーブルで七海と向かい合わせ。
どうしても解らない数学の問題があるからと。
今日の俺はこいつのカテキョ。
「やった、解けた! ありがとう、瑛くん」
「どーいたしまして」
「でも、解らないトコ教えてもらっていいの?」
「ああ、店がヒマな時は教えてやる」
「へへ、ありがと」
まったくこいつはきっと分かってない。
この一年が勝負だろ。
『な…………またかよ……』
二年に進級したこの4月。
そして。
クラス替え。
二年のクラス替え……。
一年生の時は違うクラスで。
逢えるのは休み時間くらいで。
だから俺はこの日を心待ちにしてたんだ。
ものすごく楽しみにしてたんだ。
それなのに。
『あー……瑛くん、今年もまた違うクラスになっちゃったね』
朝途中から一緒に登校して、隣にいる七海は。
のほほんとしたカオして掲示板を見てた。
『おまえ……俺と一緒のクラスになれるように願ったか?』
『え? なんで?』
『そりゃ、おまえ……おまえと………………おまえを〜……イジメられるからだろうが』
『やだ。 それじゃ願わないっ』
俺はそれなりに望んでたんだけどな。
おまえと一緒のクラスになれば。
退屈しない済むだろうって。
すごく……。
すごくガッカリしたんだ。
それで俺は思い出した。
三年生は進路別のクラス分けになる事。
だから。
『おまえはこの一年、死に物狂いで勉強しろ、いいな?』
『へ?』
『俺が面倒みてやる。 わかったか!?』
俺と同じ進路になるかどうかは別として。
この一年で成績を上げて。
絶対。
絶対来年同じクラスにしてやろうと。
「ふぇ〜……まだあと3問もある〜……」
「もうちょっとだろ? 頑張れよ」
「はぁ〜い……」
渋々次の問題に取り掛かろうとする七海に。
「おまえは……高校卒業したらどうするんだ? 進学か?」
「わたし? わたしは…………瑛くんは?」
「俺?」
まさか俺に話が振られるなんて思わなかったからビックリした。
「俺は……大学、だろうな」
「……どこの?」
「まぁ、行ける範囲で一流だろうな」
「行ける範囲で一流? 瑛くん、スゴイなぁ」
「おまえは?」
「わたし…………わたしは……行けたら、大学……かな」
「一流か?」
七海は慌てて手を振る。
「やっ、たぶんそこは行けないんじゃないかな……自信ないし……」
七海は頭は悪くない。
今だって上の下くらいだ。
ちゃんと50番には入ってる。
「目指せよ」
「え?」
「無理じゃない。 おまえなら、大丈夫だろ」
「で、でも……」
俺は軽く七海にチョップする。
「たっ!」
「自信持て。 ほら、次の問題」
そうだな。
おまえは一流目指せよ。
そうすれば。
俺の生活も。
高校卒業しても。
その先ずっと。
もっともっと退屈しないで済むだろ。
つまんない毎日を送らせるなよ。
俺に。
「undesired」 |
20170129 |