最近。
『ミルクレープ2とシフォン1、あとカフェオレ、キリマンジャロ、ブラジルブレンドお願いします!』
なんだか。
板についてきてる気がする。
珊瑚礁のバイト。
ちゃんとオーダーも取れるようになったし。
じいちゃんも。
『お嬢さんがいてくれて助かる』
と褒めてきてるし。
5月から働いてるから半年は過ぎてる。
まぁ、俺の目から見ても。
ちゃんと働けてる。
意外に気が利いて。
よく、やってくれてる。
『うわっ!』
段差に躓く。
秋月はトレイに乗ってる紅茶を零しそうになって。
褒めた途端にコレだけどなと。
俺は少し苦笑した。
秋月のバイトの時間は俺が働く時間より短いけど。
忙しい時なんかは閉店時間間近でも残ってくれるし。
じいちゃんじゃないけど。
確かに助かってるかもしれない。
――あんま認めたくはないけど。
ショッピングモールの雑貨屋。
何がいいかとぶらついてる。
もうじきクリスマス。
パーティーなんかめんどくさいと。
書き入れ時だし、店で働こうとしたらじいちゃんに止められ。
『店はいいから、パーティーに行ってきなさい』
そんなワケで。
俺はプレゼント探しにココに来ている。
ああ。
なんで秋月のコト思い出すんだ?と思ったら。
この“イルカ型ツボ押し君”。
たまに学校でも、疲れてるんだろうと思うけど。
ヘンなカオしてる時があるから。
それに。
たまに学校で一緒に昼飯が食べられる時は。
大概俺の分まで弁当を用意してくれてたりするから。
それに――。
気のせいなのか。
あいつと一緒にいると何もしないでいい気がする。
気ぃ遣って話す事も、愛想笑いも。
そんなの全く必要がなくて、寝ていられる。
だから。
あいつにくれてやろうかなと。
それをレジまで持っていって。
ラッピングもしてもらう。
店を出て。
気づいた。
そういえば。
プレゼントって交換するって言ってたっけ。
手の中にあるプレゼント。
うまくあいつに回るのかな。
来るの……だいたい全校生徒だろ?
何百人だろ?
…………ムリだろ、それじゃ。
それで目に留まったのが。
おもちゃ屋の前に何台も置いてあった。
ガチャガチャ。
200円を入れて出てきたのはヘンなクマのキーホルダー。
よし。
これ、交換用にしよう。
俺がプレゼント出さないなら出さないで。
いろいろうるさそうだし。
これを自分でラッピングすれば問題ないだろ。
「さすが俺」
それで、これは。
仕方ない、あいつにくれてやるか。
そんなにあいつに気を遣うことはないと思うけど。
俺の大事な店で、それなりにしっかりやってくれてるからな。
まぁ。
ちょっとした礼、だな。
勘違いするなよ。
他に何の意味もないからな。
ホントに礼、なんだからな。
「choice」 |
20091126 |