「ねぇ、パパ! 今日ね幼稚園に一緒に行ってくれたでしょ!? そうしたらねぇ、みんなパパかっこいいって言ってくれたんだよ? あたしねとってもうれしかったの!!」

 

そう言って傍らにいる娘は大きな瞳を輝かせてはしゃいでいた。

ソファで俺は読んでた本を閉じて。

自分にもあいつにも似た、この娘を見た。

今日は俺の仕事が休みの日。

娘が通う幼稚園に初めて送ってやった。

 

「あたしもねパパってカッコいいと思うんだ。 クラスのようすけくんやたくまくんより全然カッコいいもん! だからあたしが大きくなったら結婚して!」

「……え?」

 

娘は俺の腕をとって小さい自分の腕をからめた。

 

「ね? ね? お願い!」

「……いや、パパは……」

「ダメよ! ダメダメ!」

 

キッチンから奇声を発しながら、夏野が出てきた。

 

「ダメ! あなたはパパの子供でしょ? パパはママと結婚してるんだから!」

 

夏野は娘が腕をからませている俺の反対側の腕を組んだ。

 

「やだ! いいじゃん! ママは幼稚園じゃ男の子に人気があるんだから! パパはママよりあたしのことが好きなんだもんね!」

「違うの! パパとママが結婚してるからあなたがいるのよ!!」

 

……何だ、このやりとり。

 

「……おい、ふたりともいい加減にしないか……」

 

俺はため息をつきながらどっちも引かないふたりの問答を聞いていた。

 

「パパ!」

 

突然、娘は俺の腕をとって立ち上がり自分の部屋に行こうとせがむ。

 

「あたしの部屋でお話してよ! ね?」

 

娘の強引な強行に。

残された夏野はただ呆然と俺たちを見送るだけだった。

 

 

 

 

 

「なぁ……ママのこと嫌いか?」

 

寝る準備をとベッドの中に潜り込んだ娘に俺は問いかけた。

 

「ううん、大好き!! けどね……あたしの好きな男の子がみんなママのこと好きなの……ちょっと悔しいかなぁ」

「……そうか」

 

幼稚園児にもあいつ、人気があるのかと俺は苦笑していた。

 

「ねぇ、パパはママのこと好き?」

 

絵本を開きながら俺は即答する。

 

「ああ……パパはママが大好きだよ」

 

 

 

暫くすると。

すやすやと寝始める娘。

俺はその髪を撫でた。

 

俺と夏野の、子。

 

子供ができないなら。

それも仕方ないと。

なら、夏野とふたりで周りが羨むくらい愛し合いながら生きていこうと思ってた。

 

ある日の、帰宅。

夏野が俺のシャツの裾を摘まみ。

顔を赤くさせながら言った、感謝の言葉と。

告げられた、妊娠。

 

何の前触れもなく訪れた事実は。

本当に今まで経験したことがない感覚。

くすぐったくて。

 

こんなにも幸せでいいんだろうかと。

 

 

 

ふと、気配。

部屋の入り口には、夏野。

 

「何だ、いたのか……来いよ」

「寝ちゃったの?」

「ああ、ぐっすり」

 

ベッドに座っている俺の横にちょこんと座り、ふたりで娘を見ていた。

 

「幸せだよね……」

「……ああ、そうだな」

 

俺の手は夏野の左手に伸び、ぎゅっと握る。

 

「可愛いな……おまえにそっくりだ……小さい頃に似てる」

「わたしに似てる? わたしこんな感じだった? 珪くんじゃないの? だって独占欲強いの珪くんだもん」

「……強いのイヤか?」

 

俺は夏野のほうに向き直り、じっと夏野を見た。

夏野は少し頬を赤く染めながら、上目遣いで。

 

「珪くんなら……イヤじゃないよ……」

 

結婚して長いのに。

未だこいつは可愛さを失わない。

 

「でも、なんか珪くんとられたみたいで……ちょっとくやしいかな? ふふ、大人気ないね、自分の子供に」

 

突然俺は夏野を部屋の床に押し倒し。

息がかかるくらいのところで話し始める。

 

「ちょ……!」

「何なら……男、作るか……?」

「え?」

「今ここで作ってやる……」

 

スカートをたくし上げて。

夏野の太ももに触れる。

ようやく事態を把握した夏野は真っ赤になりながら抵抗した。

 

「ばっばかばか! この娘がいるのに……!」

「こいつは寝てるだろ? 当分起きない」

「ダメ! ここじゃ絶対ダメ!!」

「……考えてみろよ、俺似のハンサムな男が産まれるぞ」

 

黙った夏野。

 

「あ……考えてる」

 

はっと我に返り、迫ってくる俺に再び抵抗した。

でもすぐに。

夏野の上から退く。

おしまい。

夏野はどうしたの?と尋ねる。

 

「……やっぱ、今はやめとく」

 

と夏野を立ち上がらせて娘の部屋を出た。

 

「???」

「……子供できたらおまえ、そっちにかかりっきりだもんな。 ましてや男だったら……俺……」

「妬いちゃう?」

「……そんなの、わからないだろ?」

 

夏野に図星かもしれないことを言われ、俺は顔が少し赤くなるのを感じながら口を尖らせそっぽを向いた。

 

「……へへ、珪くん、好き!」

「何だよ、急に……」

 

俺の腕をとり、階下へ下る。

 

「嬉しいってこと! 結婚して、あの娘が産まれて、珪くんにこんなこと言われて……わたしもうすぐ死んじゃうんじゃないかって思うくらい幸せ!」

「そうか……子供は出来ても、出来なくても……」

 

俺は夏野を抱き締め、キスし。

 

「風呂一緒に入って……今日は思いっきり、エッチなことしような」

 

夏野は再度顔を紅潮させ。

 

「……ばか……」

 

と、俺の胸を小突いた。

 

 

 

 

 

「fruit of love」
20170402



アップ予定0パーセント創作……ホントごみ箱に行きかけた創作です(笑)
アップに迷いに迷いましたが、13年前に書いた創作(!)ですので、ほぼ出来あがってたのもありせっかくだからアップしました。
某所でも書いたのですが……ゲームに出てこない人をあまり自分の創作に出したくないのです、ホントは。
今回王子と主人公ちゃんの子供話なのですが、全ッッッ然公式ではないので名前をつけませんでした。
こんな小さい娘の一人称なんて、おおかた自分の名前だろうに。
なので娘とかあの娘とかいやに不自然。
このふたりなら↑の子以降もいそうですが……ひとまずここまで、です。
てかよくこのGSで結婚、子供までの話に広がったな私(笑)










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