「…………はぁ」
自室に響く大きな溜息。
無駄に広いこの家にひとりでいるのを。
慣れてしまった自分がいた。
誰かがいたらいたで一日中こうして好きな事してるのは。
なかなか無理があるかもしれないけど。
余計な邪魔が入らない分。
誰もいなくて。
よかったとさえ思う。
窓の外を見れば。
どんよりと重く圧し掛かる灰色の雲。
こんな天気だからだろうな。
なんて言い訳をしたりする。
もうじき。
クリスマス。
最後の。
俺とあいつにとっては最後の。
理事長の家のクリスマスパーティー。
もう、最後、か――。
おまえとのクリスマス。
最後にはしたくないけど。
高校生最後のクリスマスだから。
プレゼント交換なんかじゃなくて。
ちゃんと。
おまえだけに。
贈りたい。
『……いつか作ってやるよ、おまえに似合うの』
覚えてるか?
忘れてるかもしれない。
フリマの時の約束。
おまえに似合う。
指輪。
ここずっとそればっか考えてる。
早くしないと24日が来る。
そう焦れば焦るほど。
なかなかデザインが決まらない。
そして今も。
描いたものが気に入らず。
スケッチブックを一枚破いては。
ゴミ箱へ投げつける。
いつもなら。
誰がつけてもいいアクセサリーなら。
こんなに悩むことなく。
スラスラ描けて。
すぐに作る作業に入れるのに。
あいつに似合うだけじゃダメなんだ。
あいつが気にいってくれて。
あいつが喜ぶものでないと。
そして。
俺が今まで作ってきたの中で。
もう二度と作れない、一番のものでないと。
そのまま机に突っ伏した。
こうしてると。
いつも思い浮かぶ。
あいつの笑顔。
あいつの声。
いつの間に、だったんだろうな。
いつの間にあいつは俺の中でこんなに大きな存在になったんだろう。
おっちょこちょいで。
無理ばっかしてて。
お節介で。
……だからだったのかもしれない。
目が離せなくて。
ほっとけなくて。
姉のように世話を焼いて。
妹のように慕ってきて。
母のように叱ってくれて。
娘のように拗ねたりして。
恋人のように、俺にここにいてもいいんだとこの世で一番の笑顔をくれたんだ。
こんな感情、俺は知らなかった。
どうして自分で割り切っていいか分からなかった。
どうしておまえに伝えていいか分からなかった。
“あの頃”とはまた少し違う感情。
――本当はすべてを俺のものにしたい。
汚れのない大きな瞳も。
心地のいいその声も。
俺より一回りも小さい手も指も身体も。
白くて陶器のような、でも温かいその肌も。
何もかも。
俺は起き上がってスケッチブックに再びシャーペンを走らせる。
姉のように支えてやりたい。
妹のように可愛がってあげたい。
母のように労ってあげたい。
娘のように甘えさせてやりたい。
……恋人のように思い切り抱き締めてやりたい。
そう、この指輪と一緒に。
想いを伝えよう。
燃えるような。
焦がれるような。
この想い。
頼むから。
それまで。
誰も受け止めないでいてくれ――。
「burn with love」 |
20060702 |