それはオレが心の片隅にも思わなかった一言。
シーモアに。
プロポーズされた――と。
動揺しながら、真っ赤な顔しながらユウナはオレたちに告げた。
本当は。
それだけで衝撃的だったんだ。
胸の奥がドクンって鳴った気がしたんだ。
だから冗談キツいってそんなのシカトしたかったのに。
ユウナはそれを受け止めようとする。
――シーモアのこと……好きなのか?
それだけがオレの胸中を占める。
聞きたかった。
ユウナの口から。
でも「結婚はしない」って結論でオレは。
安心したんだ。
なのに。
なんでだよ。
異界で両親に会っただろ?
決意したんだろ?
結婚しないって言っただろ?
それなのに。
なんで。
承諾なんかするんだよ。
『わたし、結婚する』
ユウナの言葉が耳から離れない。
正直聴きたくなかった……言葉だった。
スピラのため。
だったら何でもするのか?
スピラの人間が喜ぶなら。
好きでもない男と結婚するのか?
マカラーニャの森に入って立ち止まる。
前を行くユウナが振り返り、悲しそうに一番最後尾のオレを見ていた。
オレはホッとしたんだぞ。
結婚しないって聞いて。
だから。
だからさ。
好きとかそういうんじゃないんだろ?
好きでもないヤツなんかと結婚なんかするなよ。
ユウナの……ユウナの好きなヤツと結婚しろよ。
それが……それもオレ以外の男だったら………………。
きっとオレは。
同じ思いをすると思うけど……。
そこでふと。
疑問に思う。
なんでオレ……。
ユウナが結婚しないって聞いたときホッとしてたんだ?
結婚するって聞いたとき苛立ったんだ?
なんでオレ以外の男と結婚したら。
同じ思いするって決めつけてんだ?
ユウナの好きな男。
だったら祝福しなきゃいけないだろ。
でもオレは――ユウナから目が離せなかった。
ユウナがオレの知ってるユウナじゃなくなる気がして。
食い入るように見たんだ。
そう。
ユウナはそんな気持ちで結婚するんじゃない。
何か……何かあるはずなんだ。
シーモアと結婚しなきゃならない理由。
交渉。
アーロンはそう言う。
わかってる。
儀式だって。
旅の中のちょっとした儀式。
わかってるけど。
オレは小さく溜息をついた。
……諦める、しかないんだろうな……。
オレは小走りにユウナの元へ。
ユウナにヘンな心配とかさせたくないから。
何とか。
笑った。
「じゃあ、ユウナ行こっか」
諦める……?
ああ、ユウナが結婚するコトがか?
オレの……気持ち、じゃないよな?
ユウナはただのオレの守らなきゃいけない人間だから。
だから。
関係…………ないよな……?
「ask」 |
20060330 |